ご存じでしたか?今年で都営交通は100周年!

鉄道模型
カピの塚
ご存じでしたか?今年で都営交通は100周年!
こんにちは、カピの塚です。
今年の8月1日、都営交通(東京都交通局)は創業100周年を迎えました。

都営交通が始まった100年前とは、1911(明治44)年!
当時東京市内で路面電車を運営していた東京鉄道から、
路面電車事業と、電気供給事業を当時の東京市が買収したことで始まりました。

これを記念して、今年は都営交通に因んだイベントが企画・開催されていますが、
そのひとつとして、9月10日まで東京・両国の江戸東京博物館では、
都営交通100周年記念展が開催されておりました。
ホビーサーチからもほど近い両国ということで、
私も休日に見学に行ってきました。

残念ながら館内の展示物は一切撮影禁止となっておりました。
唯一撮影が許されていてお見せすることができるのは、
「ヨヘロ141」という明治時代から昭和初期にかけて
東京市電で活躍した路面電車のモックアップです。

ヨヘロ141モックアップ

モックアップとは実物大の模型のことでして、
走行機能などは備わっていません。
ご覧のとおり前半分しか復元されていないのですが、
それでも雰囲気は十分。
明治時代の洋風デザインの電車であります。
このような電車が、かつての東京を走っていたのです。

ヨヘロ141車内

車内の様子を見てみましょう。
現在の都電に比べると車体が小さ目なのか、
車内は少々狭く感じます。
天井にはこのように白熱電球が付いていますね。

ヨヘロ141マスコン

運転台の様子。
この装置は、マスターコントローラー(マスコン)です。
このハンドルを回すことで加速します。
妙にリアルですが本物でしょうか。

ヨヘロ141方向幕

行き先方向幕は新橋行きになっています。
展示されていた写真と見比べてみたのですが、
実物とはフォントが違うみたいです。


ヨヘロという耳慣れない記号は、
東京市電気局が買収した電車の出身会社や構造などによって
整理分類した文字記号だそうで、調べてみますと、

:2軸車(四輪の頭文字)
:フロントガラス装着車(ベスチビュールの頭文字)
:大正6年度更新(六年の頭文字)

ということだそうです。
現在の東京都交通局では使っていません。
国鉄・JRの形式記号に同じ文字が登場しますが、
当然のことながら意味が異なります。


ヨヘロと呼ばれたこれらの東京市電の電車は、
後の関東大震災による被災、老朽化に伴う新型車への代替、
といた事情で廃車されていくことになります。

絶滅してしまったのかと思ったらそうではなく、
なんと2011年現在でも2両が北海道の函館に健在です。
しかしなぜ函館…?

これは、1934年に発生した函館の大火により、
当時函館で路面電車を運営していた「函館水電」は
多くの電車を失ってしまいました。

東京市は被災地支援として函館水電に
なんと50両もの電車を譲渡したというワケです。
函館水電は後に函館市交通局に引き継がれ、
現在は函館市企業局交通部となりましたが、
その時の50両のうちの2両は、
除雪用電車“ササラ電車”に改造され、
現在も雪のシーズンになると大活躍しています。

大改造はされているものの、ヨヘロの面影は随所に残っており、
また履歴をさかのぼれば東京市電出身ということもあり、
1両は今回の都営交通100周年記念展に展示されておりました。
はるばる来たぜ函館から!
(※撮影可否不明のため写真は撮っていません)


さて、ここからは都営交通の歴史を振り返りつつ、
関連がありそうな模型をご紹介していきましょう。


●都電(東京都電車)

民間会社が敷設した馬車鉄道に始まり、それが電車化され、
さらに東京市電気局に買収されて東京市電はスタートしたわけですが、
東京市電は東京市内に網の目の様に線路が通っていました。
東京市が東京都に移行したあとも東京都電として引き続き都民に親しまれます。
運転系統は40系統以上もあり、都内のどこへ行くにも都電が便利だったのです。

しかしながら、日本の高度経済成長期に自動車が普及しだすと、
都内の主要道路には自動車があふれはじめます。
まだ首都高速が少なかったり、舗装されていない道路があったため、
自動車が溢れるという現象はやむを得ないとも考えられます。
そんな中、軌道敷部分への自動車の乗り入れが許可され、
いよいよ都電は定時運行ができなくなっていきます。
いつの間にか立場が逆転し、都電は道路の邪魔者として矢面に立たされてしまいました。
東京都議会は都電の廃止撤去を可決し、1972年までに都電のほとんどは廃止されてしまいました。

ですが、27系統の一部と32系統は現在も「荒川線」と名前を変えて存続しています。
これは沿線で存続の意向が強かったことと、
荒川線の大半が専用軌道で道路を走る部分が少なかったこと、
そして廃止した場合の代替バスを通せる道路が無かったことなどが挙げられます。

荒川線は全面的に近代化されることとなり、
ホームのかさ上げとステップの廃止、ワンマン化などが実施され、
現在も下町の足として活躍中です。

そんな荒川線の新旧の電車がBトレインショーティーで発売予定です。

▼バンダイ Bトレインショーティー 路面電車1~4
Bトレインショーティー 路面電車1 (都電8800形ローズレッド+7500形) (2両セット)
Bトレインショーティー 路面電車2 (都電8800形バイオレット+6000形) (2両セット)
Bトレインショーティー 路面電車3 (都電9000形ブラウン+7000形旧塗装) (2両セット)
Bトレインショーティー 路面電車4 (都電9000形ブルー+7000形現塗装) (2両セット)

このほかにもNゲージがいろいろあります。

▼ワールド工芸 東京都交通局 都電9000形 (組立キット)
東京都交通局 都電9000形 (組立キット)
ワールド工芸からは都電9000形の組み立てキットが発売されました。
大好評のうちに完売しております。

▼MODEMO 東京都交通局 都電9000形 (完成品)
東京都交通局 都電9000形 (完成品)
※松屋銀座の鉄道模型ショウの展示パネルです

9000形は今後、MODEMOから完成品が発売予定となっています。
価格や発売時期は未定ですので、詳細なご案内が届くまでお待ちください。

●都バス(東京都営バス)

都営バスは、1923年の関東大震災で東京市電が多くの被害を受けた際に、
代替交通機関として市営バスを導入したことに始まります。
当時大量生産されていたT型フォードを入手し、
荷台を改造してバスとして走らせました。
当時の東京市営バスは「円太郎バス」と呼ばれて親しまれたそうです。
これは明治時代の乗合馬車「円太郎馬車」に荷台が似ていたからだとか。

つーか円太郎って誰よ?と思う方もいらっしゃると思うのですが、
これは明治時代の落語家・四代目橘家圓太郎のことを指しています。
四代目橘家圓太郎は乗合馬車の御者が吹いているラッパを吹きながら、
モノマネのごとく寄席の高座に登場したことが大ヒットしたそうです。
その影響で東京市民は乗合馬車を円太郎馬車と呼ぶようになりました。
そして1923年の関東大震災後、T型フォード改造の市営バスが走り始めると、
円太郎馬車に似ていたという理由で円太郎バスと呼ぶようになりました。
四代目橘家圓太郎は1898年に亡くなっていますが、
東京市民に色々な意味で影響を与えた噺家なのです。

そして関東大震災後の円太郎バスの大活躍によって、
日本の各都市でバスが導入されるようになったのもまた重要な事実。
その時歴史が動いたのです。

現在、東京都内の都営バス網はかつての市電のように大変細かくなっています。
都バスの始まりが震災後の緊急復旧対策だったというのは意外でした。

▼Revell 1/16スケール フォード T 1912 (プラモデル)
フォード T 1912 (プラモデル)
ドイツレベルから1/16スケールのフォードTのプラモデルが発売予定。

年式も仕様も円太郎バスとは違いますが、
当時、東京を走っていた自動車の雰囲気だけでも。

▼TOMYTEC ザ・バスコレクション 都営バス2台セットA
	ザ・バスコレクション 都営バス2台セットA

実は都営交通100周年記念のバスコレだったりします。
昭和30年代に大活躍のボンネットバスと、
現在活躍中のノンステップバスが各1台入ったセットです。

円太郎バスを見た後に現在の都バスを見ると、
やはりそれだけ時間が流れているのだなと感じます。

●都営地下鉄(東京都地下高速電車)

都営地下鉄は営団地下鉄(現・東京メトロ)とは別に、
東京都内で地下鉄を運行しています。

1960年、都営1号線が押上~浅草橋間で開業。
それと同時に京成電鉄押上線との直通運転が開始されました。
少しずつ延伸開業が続き、1968年には京浜急行電鉄との直通運転を開始。
同じ年に泉岳寺~西馬込間が開業し、完成となりました。
1号線に「浅草線」という名前が付いたのはその18年後の1978年でした。

ホビーサーチの最寄の蔵前駅と浅草橋駅は都営地下鉄の中でも
最も古い駅に数えられます。

さて、GREENMAXから都営浅草線の5000形が完成品で発売予定です。

▼GREENMAX 都営地下鉄 5000形 旧塗装・未更新車
都営地下鉄 5000形 旧塗装・未更新車

登場時は2両編成で運行されていました。
旧塗装と呼ばれるツートンカラーは浅草線のラインカラーとは関係ない色ですが、
これは当時の京成電鉄に塗装を合わせていたためです。
色の境目にステンレスの飾り帯が入っているのが特徴です。

▼GREENMAX 都営地下鉄 5000形 新塗装・更新車
都営地下鉄 5000形 新塗装・更新車

そして新塗装・更新車も発売予定です。イヤッホゥゥゥゥゥゥ!
京成電鉄が塗装変更を行い始めた頃、
交通局では5000形の塗装変更や更新工事も始め、
白に赤帯という軽快なデザインになりました。

ただし、5000形の更新と塗装変更は何年もかけて順番に施工したうえ、
中には施工されなかった編成もありました。
よって、旧塗装車と新塗装車の混結が当然のことながらありました。

5000形は1995年に全車引退となりましたが、
そのわずか4年前の1991年まで旧塗装車も在籍していたという、
なんとも中途半端な結果になっています。
これを踏まえまして、GREENMAXでもお客様がお好みで編成を組めるように、
細かいセット構成として発売予定となっております。

京成線は京成成田、京急線は新逗子や羽田まで、
そして北総線の千葉ニュータウン中央までと、
地下鉄車両でありながら東へ南へと広域に運用されていた電車ですので、
模型としてもビッグな脇役としてお楽しみいただけるかと思います。


▼MICRO ACE 都営地下鉄 5300形
都営地下鉄 5300形

ちなみに、現在の浅草線で活躍中の5300形はMICRO ACEから発売中!
こちらも5000形と同様に京成線、京急線、北総線に直通運転してます。


都営地下鉄は浅草線の開業に続いて、
三田線、新宿線、大江戸線の合計4路線が開業し、
都営地下鉄のネットワークが形成されました。


都営地下鉄には線路幅に特徴がありまして、
浅草線は京浜急行線に乗り入れるため1435mm(標準軌)です。
ちなみに京成電鉄も浅草線との乗り入れのため全線を改軌工事しました。
三田線は東武東上線と東急目蒲線(現・目黒線)に乗り入れるため1067mm(狭軌)です。
ただし、東武東上線との乗り入れは実現していません。
新宿線は京王線と乗り入れるため1372mm(都電と同じ)です。
そして大江戸線は1435mmですが、リニアモーター駆動方式を採用したため、
トンネル・車両ともに一般の鉄道より小さく作られています。
すなわち、4路線とも規格が異なる個性豊かな地下鉄となっています。
逆に言うと4路線とも互換性が無いというのはちょっとした問題でもありますが…。


浅草線以外の都営地下鉄の電車の完成品模型は現在のところ皆無でして、
GREENMAXの東武10000系エコノミーキットに新宿線10-000形の正面パーツが、
同じく京王6000系エコノミーキットに三田線6000形の正面パーツが、
それぞれオマケとして入っていますので、
似た車体の電車のキットを用いて製作にチャレンジされた方もいらっしゃることでしょう。


●その他の都営交通

◆都営トロリーバス(東京都無軌条電車)

トロリーバスとは、見た目は普通のバスですが、
屋根にトロリーポールを備え、電気で走る交通機関。
線路が無いので敷設が簡単な交通システムということで、
1950年代~1960年代に都内にも4系統の路線がありましたが、
保守整備にコストがかかることや、雪道でもチェーンが巻けない、
鉄道の踏切を渡る系統は補助エンジンを積まねばならない、
など盲点も意外に多かったようです。
そんな事情もあって都営トロリーバスは16年ほどで全線廃止となってしまいました。

トロリーバスは見た目は自動車のバスそっくりですが、
法律上では電車、すなわち鉄道の仲間として分類されています。

残念ながらトロリーバスの模型はホビーサーチでのお取扱いは今のところありません。

◆上野動物園モノレール(東京都交通局上野懸垂線)

1950年代、未来の東京の乗り物の一つとして、
東京都ではモノレールの研究開発に乗り出しました。

道路の渋滞に影響されずに空中をスイスイ。
大規模輸送は地下鉄に任せるとして、
それほどでもない所にはモノレールを敷設しようとしたのです。

その実験線として建設され、1957年に開業したのが上野動物園モノレール。
上野動物園の東園~西園間の2駅、わずか300mの距離を結んでいますが、
公道上を通過するため鉄道事業法に基づく本物の鉄道となっており、
決してアトラクション施設ではありません。

モノレールというと、SFの世界とか、
サンダーバードの世界でよく登場するので、
私くらいの世代は近未来の乗り物というイメージが多少なりともありますが、
都営交通のモノレールはこのあと増えることはありませんでした。

先日跨座式モノレールである、東京モノレールがフジミから発売されましたが、
模型の世界でもモノレールはまだまだ発展途上。
いつか懸垂式のモノレールの模型が発売される日を待ちましょう。

◆日暮里・舎人ライナー(東京都交通局日暮里・舎人ライナー)

2008年、日暮里~見沼代親水公園間を結ぶ新交通システム、
日暮里・舎人ライナーが開業しました。
都営交通の交通機関としては一番新しいです。

新交通システムとは、正式名称を案内軌条式鉄道といい、
コンクリートの軌道上をゴムタイヤを装着した小型電車が走るしくみです。
地下鉄より小さくバスより大きい、中量輸送機関という位置づけです。

日暮里・舎人ライナーは新交通ゆりかもめとシステム的には一緒なので、
もし軌道がつながるようなことがあれば、
乗り入れができなくもないかもしれません(適当)。

このような新交通システムは、神戸、大阪、横浜、さいたまなど、
様々な都市に建設されていますが、こちらも模型はまだまだといったところです。
新交通システムの模型もいつか発売されるよう祈っております。

なお、日暮里・舎人ライナーは東京の難読地名を二つ付けた路線名。
「にっぽり」はまだしも、「とねり」は都民でも読めない人がいるくらい難読です。



以上のように100年間の都営交通を振り返ってみましたが、
都電の栄枯盛衰、都バスの登場、都営地下鉄の発展、
モノレールなど新しい交通システムへのチャレンジなど、
様々な出来事がありましたね。

こんなに沢山の種類の交通システムを運営してきた交通事業者は、
本当に珍しいと思います。

先駆け、お手本、実験という意味合いの部分も見え隠れしますが、
東京市民~東京都民の毎日の足を支えている都営交通のこれからにも期待して、
今回のレポートを終わりたいと思います。


担当:カピの塚







★おまけ★

都営交通100周年記念展の中に、
都電のモジュールレイアウトがありましたので、
その一部をご紹介します。

都電モジュール・銀座四丁目

左側は銀座四丁目交差点を再現したモジュールレイアウトです。
都電1系統のスター・PCCカーこと5500形がおります。
なお、右側は別のモジュールで日本橋白木屋前を再現しています。


都電モジュール・勝鬨橋

勝鬨橋です。
かつて大きな船が通るときは、中央の跳ね橋が開閉していました。
「こち亀」でもよく登場する橋ですね。
このレイアウトは電飾も付いていて見とれてしまいます。


都電モジュール・大塚駅前

大塚駅前です。
山手線の大塚駅をくぐり、駅前をカーブをしていきます。
植込みの緑や赤茶けた軌道敷など、色の対比が面白い風景です。
高架線の上には山手線のほか湘南新宿ラインも通っています。


都電モジュール・王子駅前

王子駅前です。
高架線の上には東北新幹線が通過中です。
築堤の上には京浜東北線や宇都宮線が走ります。
地上の荒川線は王子駅前停留所を出発すると、
併用軌道に出てカーブを曲がりながら飛鳥山前の坂を上ります。
地下には東京メトロ南北線が通っておりますので、
立体交差の要素をふんだんに盛り込んだレイアウトを作りたくなる
いわば都電荒川線のハイライトシーンの一つです。
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