こんにちは、カピの塚です。
大都会の真ん中で、
昼間に電車が走らない鉄道路線があります。
場所は兵庫県神戸市兵庫区。
路線長:2.7km。全線単線。
駅は兵庫駅と和田岬駅の2つ。
通称、JR和田岬線と呼ばれるこの路線は、
平日は朝夕の通勤時間帯に合計17本しか列車が運行されていません。
土曜日はさらに少なく12本、休日は朝夕各1本のたったの2本。
参考リンク:和田岬駅時刻表
平日、
土曜日、
休日
正式にはJR山陽本線支線といいます。
もともとは1888年に当時の山陽鉄道が鉄道建設に必要な資材輸送のため、
兵庫港(神戸港)から兵庫駅まで貨物線を敷いたのが始まりです。
最盛期には、沢山の貨物線や専用線が枝分かれして、
文字通り樹木の枝のような路線図がこの一帯に存在していました。
物流の変化にともなう鉄道貨物の縮小にともなって、
枝分かれしていた沢山の線路は整理され、
現在は、兵庫駅~和田岬駅の旅客線1本と、
途中から川崎重工兵庫工場へ分かれる専用線で構成されています。
朝夕の通勤時間帯にしか列車が運行されていないとは不便な…と思いがちですが、
和田岬線の列車は和田岬駅周辺の三菱重工・三菱電機などの工場への通勤客がメイン。
通勤時間帯にはそれこそ6両編成の電車が満員になるほどの混雑で走っているのです。
ただし、この界隈は神戸市営バスも走っていれば、
2001年には神戸市営地下鉄海岸線も開業しており、
決して交通の便が悪いわけではありません。
現在使われている車両
現在和田岬線で使われている電車は、スカイブルー色の103系です。
この1編成が専用車として一日中兵庫駅と和田岬駅を往復しています。
GREENMAXから特定ナンバー編成の車両セットとして発売予定です。
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JR 103系関西形 和田岬線 6両編成セット (動力付き)
見た目の上では、JR西日本管内でよく見られる形態の103系電車ですが、
行先表示が「兵庫⇔和田岬」という矢印表記。
2駅間を往復するだけなので終点についても切り替えないで済みます。
また、実車の車内には広告がほとんど掲出されていないのが特徴です。
ちなみに、この編成が検査などでお休みのときは207系1000番台が代走します。
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JR 207-1000系 通勤電車 (新塗装) (増結・3両セット)
平日は3両編成×2本連結の6両編成で、
土休日は3両編成での代走となります。
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動力ユニットFW (WDT55BN付・207系用)
TOMIXの207系1000番台の3両セットは増結用で動力が入っていないので、
分売の動力ユニットを組み込むと走らせられるかもしれません。
組み込みには工夫が必要なので注意が必要です。
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鉄道コレクション JR 201系 東海道・山陽緩行線 (7両セット)
和田岬線を201系が走ったこともあります。
東海道・山陽緩行線の201系で、通常は7両編成ですが、
和田岬線での代走では中間車のサハを1両抜いた6両編成となり、
これも珍しい光景となりました。
気動車時代のお話
和田岬線は2001年に電化されたのですが、
それまでは都会に残された数少ない非電化路線でした。
非電化時代にはキハ35系が使われていたのですが、
これもまた特殊仕様車で「キハ35系300番台」という、
あまり聴き慣れない番台区分になっていました。
キハ35系は片側に両開きの扉が3つある通勤型気動車ですが、
兵庫駅も和田岬駅も同じ側にしかホームが無いので、
ホームの無い側は3つのうち2つを鉄板で封鎖する改造をし、
2両1組で編成するところ片方の車両からはエンジンを取り外して
名前も「キハ35形」ではなく「キクハ35形」となっていました。
車内は車端部の座席は撤去しており、一般的なキハ35系よりも座席が少なかったのです。
車体色も薄い水色地に焦げ茶色の帯という他にはないものでした。
全8両が改造されましたが、和田岬線の電化によって全車引退しています。
今のところ、完成品のNゲージ模型は発売されていないため、
KATOやMODEMOのキハ35系を改造して製作した方がいらっしゃると思います。
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キハ35 首都圏色 (M)
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キハ35 首都圏色 (T)
改造用の種車にいかがでしょう?
塗り替えで手軽に和田岬線の雰囲気を出すのも良いかもしれません。
本格的に改造する場合、
閉塞された外吊り扉の跡を平滑に仕上げる技術が必要ですね。
キクハ35は床下のエンジンのモールドも削り取らないとならないので大変そうです。
テールライトは片側だけ点灯するように加工すると粋かも。
客車列車時代のお話
キハ35系300番台が登場する前は、旧型客車をディーゼル機関車が牽引していました。
最後に使われた旧型客車はオハ64系という和田岬線専用車。
これは60系客車を改造したもので、車内のボックスシートとトイレを全て撤去し、
吊り革と15人分程度のロングシートを設置。ホームがある側には、
車体中央に外付けの手動扉を設置して…という完全に通勤客のための改造メニューでした。
通勤時間帯はほとんど座席の無い5~6両編成の客車に沢山のお客さんが乗り込み、
デッキ部分から人がぶら下がるほどの混雑だったということです。
旧型客車なので扉は全て手動で、すぐ次の駅に着いてしまうので、
開けっ放しでも走っていたようです。
客車の前後にディーゼル機関車を1両ずつ連結し、
プッシュ・プル運転が行われていたのも特徴的で、
終点の駅に着くとすぐに折り返す(とんぼ返りする)様子から「トンボ号」と呼ばれていたようです。
驚くことに、このような旧型客車の一般営業列車はJRで最後の部類となっており、
しかも1990年9月までこのような運行が行われていたのでした。
YouTubeにも末期の頃の映像を投稿している方がいらっしゃいます。
そんな他では類を見ないような客車列車が運転されていたわけですが…。
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DE10・64系客車 和田岬線・さよならトンボ号 (7両セット)
MICRO ACEがNゲージで鉄道模型化しておりました。
期待を裏切りませんね。
客車の側面中央にあるやっつけ仕事的な外吊り扉、
車内がすっからかんに見えるロングシートなども再現。
専用の金型を起こして模型化したという代物です。
和田岬線の今後
和田岬線はこのような通勤輸送目的の他に、
川崎重工兵庫工場で作られた新型電車の搬出経路としても利用されています。
和田岬線の線路は途中で川崎重工兵庫工場の専用線が分かれています。
つまり日本で走っている鉄道車両の何割かは川崎重工兵庫工場で作られ、
和田岬線の線路を通って各鉄道会社へ向けて出荷されています。
現在でも貨物線としての重要な役割を担っているのです。
ただ、和田岬線は廃止されるのではないかという噂が出ては消えています。
2001年の神戸市営地下鉄海岸線の開業に伴って廃止されるのではという噂が立ちました。
しかし、JR西日本は地下鉄海岸線の開業と時を同じくして和田岬線を電化し、
103系を投入してダイヤ改正の上で増発しました。
和田岬駅の近くに御崎公園球技場(神戸ウイングスタジアム)があり、
2002年の有名サッカー大会開催を見越した準備という意味もあったかもしれません。
(実際にはサッカー観戦客輸送には使われなかったようです)
地下鉄海岸線の開業により和田岬線の利用客数は若干減ったようですが、
和田岬線は混雑の激しい朝夕の通勤時間のみに列車を走らせ、
乗客のいない昼間には列車を走らせいという効率的な営業のため、
黒字経営となっているそうですから、JR西日本としては廃止する必要はなさそうです。
しかしながら、神戸市としては地下鉄海岸線の利用客増と、港湾地区の再開発、
和田岬線が渡る運河を利用した遊覧船の運航などを目的に、
JR西日本に和田岬線の川重との分岐点~和田岬駅間を廃止するよう要望しているそうです。
(黒字路線の廃止要望とは滅多にないケースですが…)
地下鉄海岸線の通勤定期より和田岬線の通勤定期のほうが安そうなんですが、
和田岬線がいざ廃止となった場合、沿線の工場的にはどうなのか気がかりです。
今後の和田岬線の行く末を見守っていきたいところですね。
担当:カピの塚
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JR 103系関西形 和田岬線 6両編成セット (動力付き)
ご予約受付中です。
大事なことなので2度書いてみました。
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全国バスコレクション [JB006] 神戸市交通局
そして神戸市営バスも予約受付中です。