ザ・マネー・トレイン

鉄道模型
カピの塚
ザ・マネー・トレイン
こんばんは、カピの塚です。
今夜もディープな鉄道の世界に足を踏み込むことにしましょう。

今週も様々な車両の新規予約品のご案内が来ております。
日本には多くの鉄道車両があり、それぞれに用途が存在しています。

しかし!

中には、触れてはいけない、見ても見なかったことにする、
という、いわば業界のタブーともいえる車両がありました。


それが、こちら。

マニ30

マニ30です。


まーた、何が何だか分らない記号を羅列したな、と言われそうですネ。

この車両、戸籍の上では国鉄/JRの客車(荷物車)ですが、

所有者は日本銀行

銀行が運ぶモノって言ったら、アレしかありません。

すなわち、現金輸送車なのです。


このマニ30の運行について、時刻表には一切載っておらず、
ある日突然急行列車や荷物列車に連結されて目的地まで運ばれていました。

まるで忍者のようですね。

たまたま駅で見かけたなんていう出来事があったとして、
「○○線の△△駅を××時××分に通過した」とかを口外したり、
インターネットの掲示板に書き込んだりしてはいけません。

撮り鉄をしていたらたまたま写真が撮れたので「珍しい列車だ、よし投稿だ!」
と言って鉄道雑誌の出版社に写真を送っても掲載されることはありません。
仮に掲載したら国鉄からお呼び出しがかって日本銀行からのお叱りを受けます。

ましてや、停車中の様子を窓から覗き込んだり、
写真を撮ろうものなら、職務質問されたり、
警察にトゥーフォーされてタイーフォ…なんてことになっても
おかしくはないかもしれません。


見かけても、見なかったことにする。
そんな車両なんか実在しない、それはお前の妄想の世界。
という勢いで、マニ30について触れてはいけないのが日本の鉄道趣味の常識でした。


ええっ!!

そんな危ない話題をホビーサーチBlogで取り上げていいのか!?

いよいよカピの塚、残業しすぎで頭おかしくなったか!?



……いいんです!(川○慈英風)

マニ30による、というか鉄道による現金輸送は2003年に廃止されました。
全国に6両あったと言われるマニ30は全て廃車となり、
マニ30-2012のみが北海道の小樽交通記念館に保存されています。

2003年より後は、マニ30の話題に触れても何ら問題は無くなったようです。


2006年、MICRO ACEはマニ30をNゲージ化。

●国鉄マニ30+コキ18000 冷蔵コンテナ (7両セット)
●マニ30+コキ57000 クールコンテナ (6両セット)

まさかのコンテナ貨車とのセット販売!
しかし、これには事情があります。

客車列車や荷物列車に連結されていれば見た目が似ているので、
現金輸送車だと誰も思わないでしょうけれども、
貨物列車に連結したら見た目が違いすぎて不自然です。

しかし、国鉄は宅配便の普及に伴って荷物列車を廃止しました。
客車による急行列車も需要減に伴って運行本数を削減。

マニ30を連結できる列車はわずかに残った客車の急行列車と、
あとは貨物列車くらいしか無くなってしまいました。
国鉄の分割民営化によってマニ30の戸籍はJR貨物に引き継がれたため、
結果的に貨物列車にこっそりと連結されるのが当たり前となったのです。

というわけで、MICRO ACEでも貨車と一緒のセットにしたようです。

マニ30

見てください。顔だけなら50系客車とよく似ています。
一見、50系の荷物車「マニ50」と同じような風貌です。
でも、あまりにも窓が少なすぎると思いませんか。

マニ30

そして反対側。
なんと窓も貫通扉も無い、まさかののっぺらぼうです!
これは機関車など隣の車両から不審者が侵入できないようにしたためと思われます。

少しわかりやすくしてみますとこんな感じです。

マニ30の図解

窓の無い大きな扉がある部分が荷物室です。
扉の脇に「荷物」と書かれているので荷物車だなーってわかるわけですが、
この中の部屋に現金が収容されていました。

屋根の上も様子がおかしいですよね。
前後に鉄道無線のアンテナが付いてますよ。
客車や荷物車にアンテナなんかふつうは付いていません。
しかも、ベンチレーターの脇には、
ループアンテナも設置されているのがお分かりでしょうか。
用途は警察無線なのか予備なのか全く定かではありません。

中央の添乗員室は、警備員が待機する場所。
当時の新幹線と同じリクライニングシートと、
ブルートレインと同じ寝台が設置されていたそうです。
トイレ、洗面所の他に、小さな台所があって、簡単な炊事もできたとのこと。
エアコンも装備されています(一方、車掌室にはエアコン無し)。
警備員は当然のように出発から目的地の駅につくまで、
この部屋に缶詰状態になるわけですから生活スペースが必要ですね。

ちなみに、両サイドの荷物室と、車掌室には監視カメラが設置され、
添乗員室のモニターで常時監視が行われていたようです。
荷物室と車掌室は繋がっていないのですが、
車掌さんもこんな車両で仕事したくないでしょうねえ。



そんな謎多き荷物車・マニ30ですが、
MICRO ACE以外のメーカーからも模型化されています。

国鉄 マニ30 2007~2012 (組み立てキット)
 BONA FIDE PRODUCTのNゲージ車体キットです。
 完成させるためには、別売パーツの調達と、
 組み立ておよび塗装などの作業が必要です。

国鉄 マニ30形 客車(荷物車) (塗装済み完成品)
 エンドウの16番(1/80・HOゲージ)の塗装済み完成品です。
 車体は真鍮、台車はダイキャスト製。


さらに、先代のマニ30もワールド工芸から発売予定です!
(※先代のマニ30は、2001~2006番のことを指します)

国鉄 マニ30 (前期型) 現金輸送車 (組み立てキット)
【特別企画品】 国鉄 マニ30 (前期型) 現金輸送車 (塗装済完成品)
 先ほどまでにご紹介した二代目のマニ30とは異なり、
 先代のマニ30は旧型客車の風貌をしていますが、
 窓の無い荷物扉や、窓も扉もないのっぺらぼうの顔など、
 基本的な怪しい要素は一緒です。
 キットと塗装済み完成品のお好きなほうをどうぞ。

そしてさらに、先代マニ30のデビュー当時、「マニ34」という名前だった時代の姿もワールド工芸から発売予定です。

国鉄 マニ34 現金輸送車 (組み立てキット)
【特別企画品】 国鉄 マニ34 現金輸送車 (塗装済完成品)
 マニ34が初代の現金輸送車となります。
 太平洋戦争後の日本の復興に際しては紙幣の流通量が増えたため、
 それを輸送するべく日銀が車両メーカーに発注したようです。
 オハ35形に似ていますが、やはり独得の装備が見え隠れしています。
 こちらもキットと塗装済み完成品の2種類があります。

ワールド工芸の塗装済み完成品は「特別企画品」と題された限定生産品です。
ご注文があった分しか製作されませんので、実質的なオーダーメード品とお考えください。




というわけで、日本では役目を終えてしまった鉄道の現金輸送車。
模型の世界でもこれを持てば通な気分が味わえるかもしれません。
運転会(走行会)では誰にも気づかれないように、
ひっそりとこっそりと走らせてあげたいものですね。

以上、マニアックさにもほどがある!な世界のご紹介でした。


担当:カピの塚@そういえば昔、「マネー・トレイン」というアメリカの映画があってだな…。



(2012/12/13 追記)
MICRO ACEから、マニ30暖地型2両セットが新たに発売予定です。
マニ30 暖地型 (2両セット)
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