さらば「北陸」&「能登」

鉄道模型
カピの塚
さらば「北陸」&「能登」
毎年3月は何らかの形でダイヤ改正が行なわれ、新しい列車の運行開始、新線や新駅の開業、利便性の向上などなど、華々しい話題が目白押しです。

その一方で、運行が取りやめになる列車があるなど淋しい話題もあります。


まもなく迎える3月13日、JRではダイヤ改正を行いますが、寝台特急「北陸」夜行急行「能登」の同時廃止は注目を集めている話題の一つです。「北陸」と「能登」は、上野と金沢を結ぶ夜行列車です。これらの列車にも長い歴史がありますが、どちらも貴重なポイントがあります。これら二つの列車の思い出を交えて、関連商品のご紹介をいたしましょうか。しかし、残念ながら私は乗ったことがありませんので外から見た思い出話でも。




夜行急行「能登」

現在の「能登」は>489系特急形電車による運行となっています。この489系は今では数少ないボンネット形の先頭車を組み込んだ編成で、定期列車として用いられるのはこれが最後となります。また、クリーム色と赤の塗り分けの「国鉄特急色」という車体色も、今では数少ない存在となっています。

489系 夜行急行「能登」 平成二十一年 601M 金サワ H1編成 (基本・5両セット)
KATO 489系 夜行急行「能登」 平成二十一年 601M 金サワ H1編成 (基本・5両セット)
KATO 489系 夜行急行「能登」 平成二十一年 601M 金サワ H1編成 (増結・4両セット)

KATOでは、一昨年前から夜行列車シリーズのNゲージ商品を順次リリースしていますが、今回は偶然にも発売予定時期と、実物の列車の廃止の時期が重なっており、模型の世界においても話題の列車です。


この「能登」ですが、個人的にはどうもホームライナーのイメージが先行してしまうんですね。ホームライナーとは、格安の整理券で乗ることができる定員制の列車で、車両そのものの空き時間に回送運転を兼ねて運行されています。

以前、夕方の帰宅ラッシュの頃にヘッドマークが光っていない謎の列車を、京浜東北線のホームからよく見かけたのですが、これが489系を使ったホームライナーです。489系は「能登」として出発するまでの空いた時間に、高崎線の「ホームライナー鴻巣」と宇都宮線の「ホームライナー古河」として上野とその終点の駅をそれぞれ1往復ずつ走っております。その様子はまるでウォーミングアップでもしているかのように見えます。私は当時いつ故障して運転見合わせになってもおかしくないという恐怖に慄きながら京浜東北線の209系にて通勤していたわけですが、方や宇都宮線にはホームライナーがあり、格安の整理券で特急形電車に乗って優雅に帰宅ができる様子が非常にうらやましかったです。

もちろん、深夜の日暮里駅にて上野駅を出発した「能登」を見かけることもありました。蛍光灯が煌々と光る車内は満席になっているというイメージはあまりありませんでした。目の前を通り過ぎる「能登」の車内に、自分と同じくらいの年代の若者グループでしょうか、スノボか何かの荷物とともに談笑している様子が見えました。あぁ、今日は金曜の夜か。この週末、彼らはどこへ滑りに行くんだろうなぁ、と。このときは、そんな感じで常磐線の電車を待ちながら見ておりました。


寝台特急「北陸」

現在の「北陸」はEF64形(1000番台)電気機関車14系特急形寝台客車による運行で、いわゆるブルートレインの一つですが、その中で14系客車を使う寝台特急はこれが最後となります。

EF64 1000 一般色
KATO EF64 1000 一般色
EF64 1000 一般色
PRMLOCO EF64 1000 一般色

牽引する機関車はEF64形1000番代の一般色で、そのものずばりの模型は各メーカーより発売されております。14系のほうも各メーカーより発売されておりますが、「北陸」を商品名に冠しているものは今のところございませんので、地道に適宜該当車を集めて再現するといったところでしょうか。

余談ですが、いつかTO●IXさんあたりが「さよなら北陸」的なものを出してくれると勝手に信じております。全く根拠はありませんが。

こちらも思い出話となりますと、夜遅くの時間帯の目撃話になってしまいます。残業を終えて帰る途中、常磐線の日暮里駅で終電間近の電車をボーっと待っていると、隣の線路を小さな白いライトを取り付けた列車が通りかかります。これは、尾久の車庫から上野駅に向かう出発前の「北陸」が“推進回送”(バック運転での回送列車)で走行しているのです。この段階では先頭になっている最後尾の客車には黄色のヘルメットをかぶった係員が何人か乗っていて、手にはトランシーバーのようなものを持っていて、一番後ろから押している機関車に乗っている機関士と連絡を取っているんですね。これから上野駅でお客さんを乗せて、金沢に向けて出発するんだなぁと。

またある日の残業帰りの夜は、上野駅を出発したばかりの「北陸」を見かけるわけですが、先ほどの線路とは違って、宇都宮線の線路を北上しています。通り過ぎる「北陸」の窓からは、電球の暖かい光が漏れています。通路の補助席に座ったおじさんが、車窓を見ながら缶ビール片手に一杯やっている様子が見えます。このまま朝まで飲み続けるのか、一息ついたところで、寝台で睡眠をとるのかはわかりませんが、どちらにしても寛いでいる間に列車は太平洋側から日本海側に抜け、夜明けには金沢に到着することでしょう。冬の寒空の下、常磐線の日暮里駅のホームで電車を待っている自分とあのおじさんとはまったく違う人生だなぁと感じずにはいられません。壁一枚隔てて別次元の世界になっていますからね。




以上の思い出話は、私がホビーサーチに来る何年も前の事ですが…。夜行列車の車内ではいろいろな人間ドラマが垣間見れます。速さではなく、のんびりと旅そのものを楽しむ光景がそこにはありました。夜行列車は良いですよ、寝ている間に目的地に着くんですから。


「北陸」と「能登」は、3月12日夜に発車する便をもって廃止となります。東京の“北の玄関口”こと、上野駅を発着する夜行列車がまた一つ、二つと姿を消します。残るは「カシオペア」「北斗星」「あけぼの」くらいになってしまいました。


今週は既に上野駅や沿線で、二つの列車を撮影する“撮り鉄”の皆さんが集まっているようなのですが、撮影される方、見物される方はくれぐれも事故が無いようお気をつけください。既に他の人が構えているカメラの前には立たない、列車に向けてフラッシュは焚かない、ホームでは黄色い線の外側に出ない、線路などの鉄道用地や他人の土地には立ち入らない、係員(駅員など)の指示には従うなど、撮影マナーを守りましょう。



いろいろと話が逸れましたが、実物の列車がなくなっても、鉄道模型の世界ならいつまでも走らせることができます。「北陸」と「能登」もぜひ鉄道模型でお手元に残してみてはいかがでしょうか。



担当:カピの塚
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