伝説の急行「ニセコ」

鉄道模型
カピの塚
伝説の急行「ニセコ」
こんばんは、カピの塚です。

先月のJAM国際鉄道模型コンベンション会場にて、
KATOよりC62 3号機 北海道形と、
急行「ニセコ」基本セット増結セットの発表がありました。
ご記憶に新しいビッグニュースかと思います。

先月発表となったC62 2号機 北海道形と共に、
現在大好評ご予約受付中です。


なぜそんなに大人気なのか、ご存じない方のために、
今回はC62形蒸気機関車と急行「ニセコ」をご紹介いたしましょう。

C62形について

まず、C62形蒸気機関車と言えば、大変有名な機関車です。
さまざまな幹線の特急・急行列車の先頭に立ち、
国鉄蒸気機関車の中で一番の主役機といえるでしょう。
貨物用のデゴイチ(D51形の通称)と同様に、
シロクニという呼び方もあるくらい、
多くの人が知っている蒸気機関車であります。

そのC62形蒸気機関車の中でも、
特に人気なのが2号機と3号機のいわゆるゴールデンコンビです。
2号機は「スワローエンゼル」と呼ばれ、
両サイドのデフレクター(除煙板)につばめの切り抜きが取り付けられているのがチャームポイント。
現在も京都の梅小路蒸気機関車館に保存されています。
また、3号機は現在もJR北海道で保存されています。

蒸気機関車が連番で2台保存されているという点を見ても、
その人気度はお察しつくのではないでしょうか。


急行「ニセコ」について

そして、急行「ニセコ」についてです。

まず、ニセコとは北海道後志(しりべし)管内のニセコ町や俱知安(くっちゃん)町などの周辺地域の総称で、
アイヌ語の地名「ニセイコアンペッ」の前半部分を縮めたものが語源だそうです。
羊蹄山の北側にはニセコで始まる名前の山々があり、
スキーリゾート地として有名ですので現在はこの界隈を中心に指す人もいます。
ちなみにニセコ町は1964(昭和39)年に狩太(かりぶと)町から名称を変更しています。

※注:「イ具」は機種依存文字のため、ご覧の環境によっては文字化けしている可能性があります。

1968(昭和43)年10月。
通称「ヨンサントウ」と呼ばれる全国規模のダイヤ改正が行われ、
北海道の函館本線には急行列車「ニセコ」が登場しました。

もともと「ニセコ」は1962(昭和37)年に気動車による準急列車としてスタートしましたが、
その後のダイヤ改正により急行への格上げされたり、再び準急への格下げされるなど、
わずかな期間に波乱万丈がありました。

しかし、このヨンサントウ改正により、改めて急行へ格上げとなり、
さらに同様の区間を走る「ライラック」「ていね」を
「ニセコ」に統一するなどの大幅な整理が行われたのです。
統合される前の「ていね」に該当する上り「ニセコ」3号と下り「ニセコ」1号は、
客車列車として存続しました。ここからが重要です。

小樽~長万部(おしゃまんべ)間は5つの峠を通らねばならない“山線”ですが、
この区間では、C62形2号機が補機として一番前に、
二番目に同・3号機が本務機として、重連で連結されて走っていました。

スターであるC62形が、重連で走るともなれば、
SLファンも絶対見ておきたい夢のような列車ともいえるわけです。

このようなC62形による運転は1971(昭和46)年9月まで運行されました。
これが国鉄で定期列車として運行される最後の蒸気機関車牽引の急行列車だったでした。

その後もニセコの名前を冠した列車は運行が続けられており、
現在の快速「ニセコライナー」や臨時特急「ニセコエクスプレス」もあれば、
C11形を使った「SLニセコ」もあります。

しかしながら、わずか3年弱という短い間とはいえ、
C62形が牽引していた当時の急行「ニセコ」とは、
今でも伝説として語り継がれる列車なのであります。

KATOから発売のC62形と急行「ニセコ」について

KATOでは、この伝説の急行「ニセコ」を、今年一番の目玉としてNゲージ化します。
まずC62 2号機 北海道形が11月に先行して発売予定で、
追ってC62 3号機 北海道形と急行「ニセコ」客車セットが12月に発売予定となっています。

このセット、とにかく凄いんです。

KATOから公表されている資料を基にして、
ホビーサーチ的に情報を付加して編成図を作成しましたので、
ご覧ください。

●急行「ニセコ」編成例:上り104列車 (クリックで拡大)
急行「ニセコ」編成例:上り104列車

函館方面行きの上り列車です。
C62の単品2台と、「ニセコ」客車の基本セットと増結セットをこのように連結。
先頭は小樽~長万部間で補機として連結される2号機。
次位は小樽~函館間を走破する本務機である3号機。
客車は郵便車を2両、その後ろ1号車~7号車に座席車7両を連結。

座席車は「スハ45系」で、北海道の気候に合わせた極寒地仕様の系列。
台車の歯車式車軸発電機や、床下の大型蓄電池箱などが北海道ならではの装備。
グリーン車のスロ62形も北海道向けの500番台となっています。
これらは本州ではほとんど見ることが出来ない重装備の客車なのです。
スハ45系はKATOとしては初めての模型化です。

ちなみに、札幌~小樽間は電化されておりましたので、
当時の最新鋭電気機関車ED76形500番台が牽引していました。
この電気機関車も北海道向け、特に函館本線向けの機関車で、
Nゲージでは現在MICRO ACEからしか発売されておりません。
この編成図では、一応例としてご紹介しています。

さて、急行「ニセコ」基本セットは6両セット、
増結セットは6両セット、合わせて12両の客車のはずなのに、
この編成図には客車が9両しか登場していないですね。
これはどういうことなのでしょうか。
気づいた方は鋭いです。



続いての編成図をご覧ください。

●急行「ニセコ」編成例:下り103列車 (クリックで拡大)
急行「ニセコ」編成例:下り103列車

先ほどとは逆の札幌方面行きの編成図です。
1号車~7号車の座席車はさっきと同じですね。

この図では客車が全部で11両連結されていまして、
函館側の4両をよく見ると、荷物車が3両に郵便車が1両となっていて、
先ほどの上り列車とは違う陣容になっています。

これはどういうことかと言いますと、
座席車と機関車は函館~札幌間を往復するのですが、
郵便車と荷物車は青函連絡船を介して北海道と本州を行き来しているので、
当然のことながら、上りと下りでは連結される車両が違うわけです。

荷物車は今でいう宅配便を輸送するトラックの代わりであり、
郵便車は同様に郵便物を輸送するトラックの代わりであります。

今回の編成例で行きますと、
上り列車では郵便車が2両本州へ向かい、
下り列車では本州から渡ってきた3両の荷物車と1両の郵便車がいるわけですから、
北海道と本州を行き交う人と物の流れが垣間見れると共に、
函館本線が本州と北海道を結ぶ動脈としての役割を持っているということがわかります。
この列車一本で、どれだけの人と物を運んでいるのか、想像に難くありません。

すなわち、急行「ニセコ」の重要度。
マジで半端ないっすね!


蒸気機関車というものは最低でも二人の乗務員によって動きます。
運転を司る機関士と燃料管理を司る機関助士。
二人が息を合わせて操作しないと、蒸気機関車はうまく走りません。
重連運転では片方の蒸気機関車からもう一台の蒸気機関車を遠隔制御するなんてことはできませんので、
それぞれの機関車に乗務員が乗り込んで運転することになります。
当然のことながら、走らせるための難易度は当然高くなります。

すなわち、峠を5つも越える函館本線をC62形を重連で定刻通りに走らせる。
これマジ職人技です。


そんなドラマが、この列車で見えてくるわけです。


というわけで、C62 2・3号機と急行「ニセコ」客車大好評予約受付中です。
編成の異なる上り列車と下り列車を両方再現できるボリューム満点なセット構成となっております。
ぜひKATOの意気込みと、急行「ニセコ」の凄さを感じ取ってください。
※発売予定月が異なりますからご注意ください。

C62 2号機 北海道形 (11月発売予定)
C62 3号機 北海道形 (12月発売予定)
急行「ニセコ」(基本・6両セット) (12月発売予定)
急行「ニセコ」(増結・6両セット) (12月発売予定)



余談・その1

余談ですが、商品名こそ「ニセコ」と題していますが、
ED76形500番台やDD51形などの機関車と座席車のみで編成を組めば“北海道の普通列車”という設定で遊べます。
また、機関車と荷物車や郵便車だけで編成を組めば“荷物専用列車”に早変わり。

旧型客車や荷物車・郵便車の編成の組み方は基本的に自由です。
豪華な内容のセットですから、「ニセコ」以外の遊び方も試されてみてはいかがでしょうか。


そして、Assyパーツもご予約受付中です。
このセットに含まれる荷物車だけが欲しい方、
いろんな普通列車を作りたいので座席車がもっと欲しい方、
補修用や改造用パーツとして部品を取っておきたい方、
目的は様々かと思います。

下記のページにて対照表を掲載しております。
KATO 12月発売予定 Assyパーツのご案内

組み合わせや数量などのご確認にご利用ください。


余談・その2

もう一つ余談ですが、9月末で休館となる東京・台場の「船の科学館」
保存展示されている青函連絡船「羊蹄丸」の中に、
なんと急行「ニセコ」で使われていたスハフ44 25の実物が
超綺麗な状態で保存されています。

KATOの急行「ニセコ」セットには番号が1番違いの
スハフ44 24とスハフ44 26が入りますので、
一部仕様は異なりますが、大変参考になる史料かと思います。

関東で北海道用の旧形客車が見られること自体が奇跡ですが、
休館後は羊蹄丸の保存展示自体が取り止めになるため、
今後スハフ44 25がどうなるのかわかりません。
ぜひ「船の科学館」に急いでください!





担当:カピの塚@サムネイルは「追憶のSL C62」(JTBキャンブックス)でした。
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