今日の珍電

こんにちは。
六さんの記事の前にカピの塚です。

(良い意味で)ヘンテコなものをご紹介するシリーズをBlog班リーダーが励行中なので、鉄道の分野からもそれに該当しそうなものを。


●国鉄 クモヤ22(000、001) 試作コンテナ電車 (組立キット)


クモハ11形200番代という17m級車体の古い電車があったのですが、それをベースにして改造して誕生したのがクモヤ22形の000号と001号です。

本日現在、設計図のようなイラストしかアップされていないので恐縮ですが、車体色は茶色(ぶどう色2号)、正面は黄色と黒のゼブラ模様というカラーリングです。車体らしき場所は両端の運転室しか無く、見るからにフツーではない風貌をしていることがお分かりかと思います。

役割は、コンテナ運搬用の試作電車です。

実は、1960年代に国鉄は“東海道新幹線に高速貨物列車を走らせようぜ”計画を企てていました。従来の貨物列車は機関車が重い貨車を引っ張るという構図なので、パワーはあるけど速度は出ないので、新幹線のダイヤでは明らかに邪魔になってしまいます。そこで、新幹線車両と同じく、動力を各車両に分散した電車スタイルの貨車を作れば、「新幹線でも行けるんじゃね？」的な空気が湧き上がってきたのです。

そこで、不要となった電車を改造。こうして、コンテナ電車としてクモヤ22形の000号と001号が誕生しました。


この頃のコンテナですが、実はこんな風に積むことを想定してサイズを決めていたそうです。

在来線の貨車に積んでいたコンテナの向きを90度変えれば新幹線の横幅に合うぞと。今となっては目を疑う構想です。

しかし東海道新幹線に高速貨物列車を走らせる計画は、様々な大人の事情によって断念することとなり、新幹線を行く貨物列車は幻となりました。コンテナ試作電車のクモヤ22形の000号と001号は、試験終了後は街行くトラックと同じようなアオリ戸を取り付けて、配給電車(電車工場に部品などを輸送する電車)として使われることになりました。

●国鉄 クモヤ22001 配給車時代 (組立キット)


ところで、この配給車という電車が曲者でして、自走できる鉄道模型にするのが非常に難しいのです。HOゲージなどの大きな鉄道模型なら良いのですが、Nゲージとなりますとモーターやギアなどの動力ユニットを何処に収めるべきか。動力ユニットを隠せる部分が前後の運転室しかありませんから、昔から多くの鉄道模型人が試行錯誤を繰り返してきた車種であります。

ある人は、積載したコンテナの中にモーターなどを仕込んだことでしょう。でも、コンテナも荷物も何も積んでいない状態で自走させるには、動力ユニットの工夫が最大の難関だったといえます。

先ほどのワールド工芸のキットは、超小型動力ユニットを搭載しておりますので、コンテナや積荷で大きなモーターを隠す必要もありませんのでご安心ください。



さて、試験終了後は貨物列車は従来通りに在来線を走り続けて今に至るわけです。日本におけるコンテナ電車は幻のまま消えるのか…。


…と思いきや数十年後、JR貨物さんがやってくれました！

●M250系 スーパーレールカーゴ (基本・4両セット)


2004年、JR貨物はコンテナ電車の実用化に成功。M250系というハイパワーかつハイスピードなコンテナ電車をこの世に送り出しました。愛称は“スーパーレールカーゴ”で、ホビーサーチでもお世話になっている佐川急便さんの専用列車となっています。

スーパーレールカーゴは、深夜に東京貨物ターミナル駅を出発、そのまま東海道本線を爆走して早朝に安治川口駅(大阪)に到着します。最高速度は130km/hで、所要時間は6時間少々。何気に東海道新幹線が開業する前に走っていた東海道本線の特急「こだま」「つばめ」(151系電車)に匹敵するタイムです。しかも、佐川急便さんはスーパーレールカーゴを利用することで、年間1.2万トン以上のCO2を削減することに成功したというから驚きです。

今日の珍電ことクモヤ22形000号と001号で思い描かれたコンテナ電車構想は、形は変われどこのようにして現在の日本の物流を支えているのでした。

担当：カピの塚＠このあと六さんのブログが参ります。