こんにちは、カピの塚です。 今から30年前、リヨン発東京行きのオリエントエクスプレスが運転されました。 「フランスから日本まで!?」 「そんな列車あるわけがない!」 と当初は誰もが思ったことでしょう。でもそんな信じられない出来事が起きたのです。 オリエントエクスプレスはヨーロッパを走る豪華列車として有名です。アガサ・クリスティの小説でも耳にしたことがある方もいらっしゃることでしょう。しかし、「オリエント」とは東方、東洋といった意味ですが、オリエントエクスプレスという名前でありながらもそれまで最も東の終点はトルコのイスタンブールでした。オリエントエクスプレスを本当に東洋へ向かう列車にしたい、という夢のような構想が起き、実現したのが「オリエント・エクスプレス'88」と題した特別列車です。これはフジテレビ開局30周年記念イベントとして、日立製作所協賛、JR東日本特別協力、JRグループ各社協力により実施されました。 ユーラシア大陸を横断したオリエント急行 「オリエントエクスプレス'88」は、1988年9月7日にフランスのパリ・リヨンを出発し、ベルギー、西ドイツ、東ドイツ、ポーランド、ソ連、中国を通りました。経由した各国ではそれぞれの国の蒸気機関車が代わる代わる牽引。ソ連の線路は幅がヨーロッパ各国および中国と異なる所謂ロシアゲージのため、台車に交換して走行しました。ユーラシア大陸最後の駅である香港・九龍駅には9月26日に到着しました。 ▼KATO オリエントエクスプレス`88 (パリ~香港) ユーラシア大陸を横断した時の姿を再現した車両セットは2014年5月に発売されました。現在は売切です。 本当に日本にやってきたオリエント急行 ところで日本は島国ですのでユーラシア大陸とは線路が繋がっておりません。香港に到着した「オリエントエクスプレス'88」は、船に積み込まれ日本の徳山下松港へ運ばれました。島国である日本では線路の繋がっていない外国から列車がやってくるなんてことはまずありえない事なので、鉄道車両に関わる規格や法令が異なります。そこで、日本到着後は直ちに山口県にある日立製作所笠戸事業所に搬入され、日本国内を走行するための各種整備が行われました。もちろん、日本国内の運行を行うJR各社も予定路線の調査を行って、走行に支障が起きる箇所の対処は済ませました。こうして、整備が終わり試運転の後、10月17日から日本国内を周る旅が始まったのです。 ▼KATO オリエントエクスプレス `88 こちらは日本国内を走行した時の姿を再現した車両セットで、来日20周年記念の2008年12月に発売されました。そして来日30周年である2018年5月、約10年の時を経て再生産されました。 ユーラシア大陸横断仕様と日本国内走行仕様とでは、台車が異なる他、構成されている客車の内容が一部で異なっているのがお分かりいただけると思います。 10月中旬から日本国内での運行が始まった「オリエントエクスプレス'88」。北は北海道・南は九州までを巡る日本一周ツアーとしての運行や、各地の駅での展示イベント、主要都市を往復するシャトル列車としての運行などをこなし12月末まで文字通り日本中を駆け巡りました。 日本国内ではJR各社のさまざまな機関車が動員され、牽引や展示を担当しました。せっかくですから、模型の世界でも再現したいものですよね。 ▼MoriyaStudio 機関車用トレインマーク完成品 Part17 (S7068) 4個入り ▼MoriyaStudio 機関車用トレインマーク完成品 Part15 (S7061) 4個入り 「オリエントエクスプレス'88」の牽引機に掲げられたトレインマークですが、KATO製の機関車はクイックヘッドマークを装備しているものが多いので客車のセットに付属のトレインマークを用いて簡単に装着可能です。TOMIX製やMICRO ACE製の機関車の場合はKATO製のトレインマークのほか、こちらのMoriyaStudio製のトレインマークを両面テープ等を用いて装着することで再現可能です。 それでは、ここからはこれまでに模型化されている牽引機(一部推測が含まれます)をご紹介いたします。KATO製だけでなくTOMIX製にも牽引機に該当する機関車が製品化されていますので、一緒に紹介していきます。なお、現在売切となっているものも含まれていますが、お手持ちの機関車で収納棚や車両ケースの中で眠っているものがある方もいらっしゃるかもしれませんので、いわば備忘録のような観点でご紹介させていただきます。 北海道 ▼KATO DD51 後期 耐寒型 北斗星 ▼TOMIX JR DD51形 ディーゼル機関車 (JR北海道色) 北海道地区では北斗星などを担当するDD51形の北斗星色(JR北海道色)から1102号機などが使われたようです。 北海道・東北 ▼TOMIX JR ED79-0形 電気機関車 ▼TOMIX JR ED79-100形 電気機関車 オリエントエクスプレス'88はこの年の春に開通したばかりの青函トンネルを通って北海道に渡りました。調べたところ2号機と番号不明機(100番台?)の重連、109号機と番号不明機(0番台?)の重連があったようです。 東北 ▼KATO ED75 700 ▼TOMIX 国鉄 ED75-700形 電気機関車 (前期型) ▼TOMIX JR ED75-700形 電気機関車 (前期型・サッシ窓) ▼TOMIX JR ED75-700形 電気機関車 (前期型・オリエントサルーン色) 東北地区ではED75形が牽引しました。ジョイフルトレイン「オリエントサルーン」用の塗装機も牽引にあたりました。703号機+711号機(オリエントサルーン色)の重連は模型的に絵になりそうな気がします。 東北・関東 ▼KATO EF81 81 お召塗装機 (JR仕様) ▼TOMIX JR EF81形 電気機関車 (81号機・お召塗装) お召し仕様として有名なEF81形81号機は常磐線で「オリエントエクスプレス'88」を牽引。模型は近年の姿を再現したものなので当時とは多少異なります。 また一般仕様で83号機も牽引しています。 関東 ▼KATO EF66 後期形 ブルートレイン牽引機 ▼TOMIX 国鉄 EF66形 電気機関車 (後期型・ひさし付) 10月13日、東京駅でのイベントが行われた後、品川までの回送でEF66形50号機が牽引しました。営業運転ではないためあまり話題にはならなかったようです。 関東・東海・関西・四国・中国 ▼KATO EF65-1000 後期形 (JR仕様) ▼TOMIX 国鉄 EF65-1000形 電気機関車 (東京機関区・PS22B搭載車) 東北本線や東海道本線などを始め、幅広い活躍をしたのはEF65形1000番台です。調べたところ1011号機、1017号機、1018号機、1023号機、1024号機、1105号機、1107号機、1114号機、1122号機などが牽引しました。また「オリエントエクスプレス'88」はこの年の春に開通したばかりの瀬戸大橋を渡って高松にも足跡を残しました。瀬戸大橋線でもEF65形1000番台の出番となります。 東海 ▼KATO EF58 後期形 小窓 Hゴム (青) ▼TOMIX 国鉄 EF58形電気機関車 (Hゴム・横形フィルター・一般色) 東海道本線の静岡周辺・熱田周辺ではEF58形も牽引に加わりました。担当は122号機です。 ▼KATO EF65 0 ▼TOMIX 国鉄 EF65 0形 電気機関車 (2次形) 同じく東海道本線の静岡駅での展示ではEF65形0番台から111号機が登場。0番台はもともと貨物用に作られた機関車でしたので、「オリエントエクスプレス'88」を牽引したのは華々しい歴史の一つといえます。 上越 ▼KATO EF64-1031 長岡車両センター ▼TOMIX JR EF64-1000形 電気機関車 (1030号機・双頭形連結器付) 勾配の多い上越線の主といえばEF64形1000番台です。調べたところ後期形が重連で牽引していたようです。「オリエントエクスプレス'88」は日本のブルートレインよりもはるかに重い客車の編成です。勾配向けの強力な機関車がダブルヘッダーでヘビーな客車を牽引して峠を越えるのです。胸アツですね。 関西・北陸 ▼KATO EF81 一般色 ▼TOMIX 国鉄 EF81形 電気機関車 常磐線と同じく北陸本線・東海道本線の通し運転でもEF81形が活躍。67号機、71号機、107号機が担当したようです。 ▼TOMIX JR EF81形 電気機関車 (長岡運転所・ローズ・ひさし付) 番号まではわかりませんでしたが、ひさし付きが牽引したこともあったようです。 九州 ▼KATO EF81 400 JR九州仕様 ▼TOMIX JR EF81-400形 電気機関車 (JR九州仕様) 関門トンネルを渡って九州へ渡った「オリエントエクスプレス'88」ですが、関門区間はEF81形400番台重連での牽引だったようです。調べたところ411号機が先頭だったことまではわかりました。 ▼TOMIX JR EF81-300形 電気機関車 ローズ ▼TOMIX JR EF81-300形 電気機関車 (2次形) EF81形の中でもJR貨物所属で、しかも4台しかいないステンレス車体の300番台も牽引しました。調べたところ302号機(ローズ)+303号機(シルバー)の重連です。 ▼KATO ED76-0 後期形 JR九州仕様 ▼TOMIX JR ED76形 電気機関車 (後期型・JR九州仕様) 九州島内では鹿児島本線の熊本駅まで行っています。九州の定番機といえばED76形。71号機が牽引していたようです。 、 ▼TOMIX JR ED76形 電気機関車 (JR貨物カラー) ED76形はJR九州所属機だけでなくJR貨物所属機で当時試験塗装の青の濃淡に塗り分けられていた37号機、58号機も牽引にあたりました。JR貨物の試験塗装機はかつてTOMIXが発売していましたが、生産終了して久しいです。 各地の機関車が総動員された「オリエントエクスプレス'88」ですが、最後にもうひとつサプライズ企画が実現しました。 関東/サプライズが起きる ▼KATO D51 498 オリエントエクスプレス ’88 ▼KATO EF58 61 お召機 (改良版) 「オリエントエクスプレス'88」の牽引機の中で最も注目を浴びたのは、やはりD51形498号機でしょう。「オリエントエクスプレス'88」の国内最終運行となる12月23日、D51形498号機とEF58形61号機が重連で上野駅から大宮駅までの東北本線を牽引しました。一度は現役を退いて静態保存されていたデゴイチが本線復帰し、その最初の列車が「オリエントエクスプレス'88」。そしてEF58形の中でも一番人気のお召し列車用の61号機が一緒に走るのです。これほどに大きなニュースはありません。 こうしておよそ2ヶ月間に渡り、日本各地を周った「オリエントエクスプレス'88」は全ての行程を終え、ヨーロッパに帰りました。 美術館に収蔵されたオリエント急行 ▼KATO オリエント急行客車 プルマン4158 箱根ラリック美術館保存車 さて、1988年の来日から時を経て2004年、プルマンカー4158が再来日しました。箱根に開設された「箱根ラリック美術館」に収蔵するためです。この美術館はフランス人のガラス工芸家ルネ・ラリック(1860~1945)の作品を収蔵展示していますが、彼が内装を手がけた14両のうちの1両がこのプルマンカー4158だったのです。車内は150点あまりのガラスパネルの装飾があり、まさに走る芸術品と呼ばれるにふさわしい内装が施されています。KATOではこのプルマンカー4158も単品で製品化しています。 1988年の来日から30年。先述の通り、関門トンネルに加えて、この春に開通したばかりの青函トンネルと瀬戸大橋も渡ったことは、北海道、本州、四国、九州が線路で繋がってどこへも行けるようになったことを示しています。この年のJRグループのダイヤ改正のキャッチコピーは「一本列島」でした。JR全社の線路が全て繋がった夢のような年に、日本各地を周る特別な列車があったことは、将来に渡って語り継がれることでしょう。あの時の感動と興奮を模型でお楽しみください。 ご注文、お待ちしております。 担当:カピの塚